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藤井聡太四段のインタビューを読んで: (3)藤井四段は序盤研究家になるか

藤井四段は序盤研究家に?

プロ入りから1年たった藤井聡太四段に、NHKが行ったインタビューが公開されています。 中学生とは思えない受け答えと、彼の深い考えが読み取れる、素晴らしいインタビューです。

今回は、このインタビューから、藤井聡太四段の序盤研究に対する思いについて考えます。

戦法の幅みたいなものについては、どのように考えている?

本当は序盤から自分から考えて、いい手を作るのが理想ですけども、それはかなり遠いので、そういった意味で序盤の勉強とか研究というのも、ある程度は今の段階では必要かなと思っています。

藤井聡太四段は、「本当は序盤から自分から考えて、いい手を作るのが理想」と述べています。

新手・新戦法

将棋の序盤戦術は、既にかなり定跡化されています。

それでも時折、ある局面で新手と呼ばれる手が発見されます。 それは、その手の存在を誰も知らなかった、ということではありません。 そうではなく、その手を指したときの変化(展開)の中に、指した側が優勢になるものがあるが知られていなかった、ということです。

また、全く新しい序盤戦術が定跡化され、新戦法になることもあります。 これまでも、藤井システム(1997年 升田幸三賞)、ゴキゲン中飛車(2001年 升田幸三賞)など、画期的な序盤戦術が発見され、定跡化されてきました。

また、過去に指されてはいたものの、あまり注目されてこなかった戦法が見直され、研究が深まり、定跡化が進むこともあります。 例えば、横歩取りは江戸時代から指されていましたが、近年飛躍的に研究が進み、現在では居飛車の代表的な戦法の一つとなっています。

大抵の場合、序盤の新戦法は、まず一人の棋士によって研究されます。 最初はあまり注目されず、奇襲戦法とみなされることもあります。 その後、トップ棋士たちが採用したり、タイトル戦などの大舞台で指されるようになると、その戦法が一気に注目を集めます。 そして若手棋士奨励会員たちもそれに倣うようになり、研究や対策が一気に進みます。 そのようにして、様々な局面や変化に結論が下され、戦法が成熟し、定跡化されてゆきます。

藤井聡太四段は、そうした序盤の新手や新戦法を自分で作ってゆくのが理想、と述べているわけです。

序盤戦術の研究家

升田式石田流などの数々の新定跡を生み出し、独創的な序盤戦術で有名なのは、升田幸三 実力制第4代名人です。 「新手一生」を座右の銘とし、新手・新戦術の開拓に大きな功績を残しました。 その功績をたたえ、毎年、新手・妙手を指した棋士や、定跡の進歩に貢献した棋士に「升田幸三賞」が与えられます。

現代の序盤研究家といえば、藤井システム創始者である藤井猛 九段が有名です。 藤井システムにより、当時居飛車穴熊に苦しめられた四間飛車党は大きく巻き返し、一大ブームを引き起こしました。

一時期に比べると、現在は藤井システムは減ったものの、藤井猛九段は角交換四間飛車、矢倉早囲いの藤井矢倉の定跡化でも功績を残しています。 他にも、ゴキゲン中飛車に対する▲5八金右超急戦も、最初に指したのは藤井猛九段です。斬新なアイデアと綿密な研究は、今でも健在です。

藤井聡太四段は序盤研究家になるか

藤井聡太四段が述べるとおり、序盤戦術をすべて一から開拓する、というのは、現実的に不可能です。 むしろ、すでに定跡化されている戦法を学び身につけることから、新手・新戦法は生まれます。

序盤研究家として有名な藤井猛九段は、根っからの振り飛車党ですが、一時期居飛車を猛勉強し、その経験が藤井システムの開発に役立ったと述べています。 定跡を学び、自分のものにし、過去の研究を取り入れた所から、新しいものが生まれるのです。

藤井聡太四段は、升田幸三名人や藤井猛九段のような、序盤研究家になるのでしょうか。 ゆくゆくは「藤井聡太新手」と呼ばれる新手を開発するのでしょうか。 「第二の藤井」と呼ばれるのでしょうか。

まとめ

以上、藤井聡太四段のインタビューを読んで: (3)藤井四段は序盤研究家になるか、でした。

彼は今後、将棋においてどのようなアイデアを見せるのでしょうか。 それを形になるところまでどのように持っていくのでしょうか。 定跡開拓・新手発見の面での彼の活躍が、今から非常に楽しみです。

中学生とは思えない、トップ棋士と渡り合うプロとしての深い考えが読み取れる、素晴らしいインタビューです。 まだ読んでいない方は、ぜひ全文読んでみて下さい。

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