2017年9月6日、ロジクール社はトラックボールマウスの新製品「ワイヤレス トラックボール MX ERGO」を発表しました。 7年前に発売された「Wireless Trackball M570」以来の新型で、同社のラインナップの中で最上級となる「MX」シリーズのモデルです。 参考価格は 12,800円(税抜)で、9月22日より発売されます。
7年ぶりにリリースされた、トラックボール派 待望の新型モデルです。 トラックボール派、「M570」ユーザーの私としては、待ちに待ったモデルです。 一体どんな製品なのでしょうか。
トラックボールのメリット
トラックボールを使う人は、マウスに比べて少数です。 ではまず、マウスと比べた時の、トラックボールのメリットを見ていきましょう。
メリット1. 腕を動かさなくていいので、手が楽
カーソル移動のために、
- マウス: マウス全体を動かす
- トラックボール: ボールを回す
という違いがあります。
それで、トラックボールはマウスに比べて手・腕への負担が少なく、疲労度が低減されます。肩こりが解消されるという人もいます。
デザイナーやアーティスト、プログラマーなど、一日中PCを操作するユーザーにとって、腕の負担を軽減できるトラックボールは人気のあるデバイスです。
メリット2. 身体がトラックボールに馴染んでくる
トラックボールを使うにつれ、身体がトラックボールしか受け付けなくなります。 って書くと、ちょっと怪しいですね。
しかし、キーボードやマウス・トラックボールは常に使うだけに、自分にあった物を使うことはとても重要です。
トラックボールは、手のひらへのフィット感やボールの回し心地から、徐々に身体に馴染んできます。 トラックボール派に「もうマウスには戻れない」という人が多いのは、そのためです。
トラックボールのデメリット
一方、トラックボールのデメリットもあります。
デメリット1. 選択肢が少ない、新製品がなかなか出ない
トラックボールは、マウスに比べて使用者の数(市場規模)が少ないので、製品の選択肢が非常に限られます。
トラックボールユーザーの中で定番とされる製品はいくつかあり、トラックボール派は、毎年代わり映えしない製品の中から、自分の身体に合う製品を使っています。
そもそもトラックボールを作っているメーカー自体少なく、ケンジントン、ロジクール、エレコム他、数社の製品から選ばなくてはならないのが実情です。以前はMicrosoftもトラックボール製品を作っていましたが、現在は作っていません。「Microsoft Trackball Explorer」は、生産終了後10年以上経った今でも愛用者が多い、トラックボールの名機です。
一部の物好きトラックボールユーザーが、時折発表される新製品を試して、楽しんでいる感じです。
デメリット2. 左利きの人用モデルが少ない
トラックボールは選択肢が少ないゆえに、左利きの人用のモデルは、ほぼないです。
左右対称なトラックボールは僅かながらあるので、左利きの人はその中から選ぶことになります。
マイノリティならではの悩みですね。
デメリット3. 非常な正確さが要求される操作には向かない
非常に正確・微細な操作は、トラックボールよりもマウスのほうが有利です。
それで、FPSなどのハイエンドゲームには、ゲーミングマウスが好まれます。
従来機「Wireless Trackball M570」
ロジクールのトラックボールにはこれまで、名機といわれる「Wireless Trackball M570」がありました。
M570はとてもデザイン・使い心地が非常に良く、マウスからトラックボールに転向する入門機としても、トラックボール派のメイン機としても、優れた製品でした。
しかし、ユーザーの中には「M570」に幾つかの不満もありました。
M570の不満1. クリックのスイッチがすぐ壊れる
M570はクリックのスイッチは耐久性に問題があり、早くて半年から1年ほどでチャタリング(一度のクリックがダブルクリックになったり、ドラッグ中に離れたり)が発生することがあります。
保証期間中なら、故障してもすぐに新品に交換してもらえます。 ロジクールはサポートが素晴らしいので、交換は簡単で、費用もかかりません。 私も、何度も交換しました。
でも保証期間は3年なので、それを過ぎてスイッチが壊れると、新品を購入することになります。
愛好家の中には、自分でスイッチを強化品に交換する人もいます。ハンダごて等が必要です。当然、分解修理すると保証は切れますので、自己責任でお願いします。
M570の不満2. 後継機がなかなか出ない
M570は2010年発売です。それ以降7年間、後継機は出ませんでした。
途中で型番が「M570t」に変わりましたが、中身はほぼ同じです。値段は少し上がりましたが。。。
せめて、スイッチをチャタリング対策品に変えてもらえれば、と多くのユーザーが望んでいました。
満を持して、新作トラックボール「MX ERGO」発売!
トラックボールユーザーが待ちに待った中、ロジクールの新作トラックボール「MX ERGO」が発売されます。
では、新製品 ロジクール「MX ERGO」の特徴を見てゆきましょう。
調節式ヒンジで最適な角度を選べる
「MX ERGO」は「より自然に近い手のポジション」を研究し設計されました。 結果、「M570」と比べて傾斜が20度強くなっています。 自然な位置に手を置くことで、より快適に操作でき、筋活動量(筋肉への負担)が減り、疲労度が軽減されます。
ここから、「ERGO」の名前が取られています。
ただし、従来製品の傾斜を好むユーザーも居ると思われます。 それで、磁石で着脱可能な底面の金属パネルで角度を選ぶ機構が採用されました。 このパネルを
- 底面向かって右側に付ければ、M570と同じ角度
- 底面向かって左側に付ければ、大きな傾斜がついた状態
にできます。ユーザーは自分で好きなほうを選べぶことができる機構です。
2種類のワイヤレス通信方式に対応
これまでの「M570」は、小型レシーバを使用した「Unifying」に対応していました。「Unifying」は最大6代の対応キーボードとマウスを1代のPCで接続できます。
「MX ERGO」は、
- Unifying(2.4GHz帯の電波を使う独自方式「Advanced 2.4 GHz Wireless Technology」)
- Bluetooth LE
の2種類に対応します。
USBポートが限られるなどの理由でレシーバを刺したくない人には、Bluetooth対応は嬉しいですね。
2台のPCでトラックボールを共有する「Logicool Flow」に対応
2台のPCで1台のトラックボールを共有して、PC間でマウスポインターを移動したり、ファイルのコピーと貼り付けを行ったりできる「Logicool Flow」(海外ではLogitech Flow)機能に対応します。
カーソルの速度と精度を変更する「プレシジョンモードボタン」
「プレシジョンモードボタン」によって、操作の解像度を切り替えることができます。 これによって、瞬時にカーソルの速度と精度を切り替えることができます。
画像編集など、細かい操作が要求される時に役立ちそうです。
センターホイールのチルトに対応
センターホイールが左右チルトに対応しました。 これによって、左右スクロールが可能です。 これは便利になりますね。
メインスイッチの耐久性が改善された!
個人的には、M570でこれをやってくれればよかったのに、と思います。
内蔵バッテリー
M570は単3電池駆動でした。 電池の持ちは良く、エネループなどの充電式電池を使えば、半年以上電池交換なしで使えましたので、不満はありませんでした。
「MX ERGO」は内蔵バッテリーになり、電池の交換は必要ありません。 内臓のリチウムイオン充電式バッテリーは高性能で、フル充電後のバッテリー使用可能時間は、なんと最長4カ月。 たった1分間充電するだけで、1日中使用できてしまうそうです。
個人的な感想
ロジクールの「MS ERGO」は、トラックボール派にとって買いでしょうか。 まだ発売前ですが、個人的な感想はこんな感じです。
ちなみに私は数年来の「M570」ユーザーです。
とても嬉しい変更
「M570」からの変更点のうち、
- センターホイールのチルト対応
- メインスイッチの耐久性改善
は、とても嬉しいです。
調節式ヒンジでの傾斜調節は、使ってみないとわからないです。 底面パネルは磁石で着脱可能、とのことですが、使っていてパコッと外れたりしないのでしょうか。
あまりメリットを感じない変更
単3電池(エネループ)でも何の不満もなかったので、内蔵バッテリーに変わったことはあまりメリットを感じません。 むしろ、それで値段が上がっているのなら、残念です。
2台のPCでトラックボールを共有する「Logicool Flow」は、私にはあまり必要が無いです。
値段が高すぎ!
「M570」は、2017年9月現在 4,200円 くらいで買えます。 一時期3,000円台で買えたこともあります。
それに比べ「MX ERGO」は、発表では税抜12,800円、ロジクールストアでの直販価格は13,910円です。
いろんなメリットを考えても、10,000円近い値上げは大きいです。 価格は少しずつ下がってくると思うので、私は値下げを待ちます。
まとめ
以上、ロジクールから7年ぶりの新型トラックボール「MX ERGO」が登場!、でした。
要は、私は「メインスイッチが改善されたM570」が欲しかったんですね!
改めて「M570」の素晴らしさ・完成度に気づきました。
新商品 ロジクール「MX ERGO」も、とても良い製品だと思います。
値段も最初は高いですし、初期ロットは不具合も多い可能性があるので、私は少し待ちます。 でも、そのうち必ず買うと思います。